相続人の一人が勝手に財産を処分してしまったら?どうやって問題解決する?
相続でのトラブルは数多く発生しており、親族関係が崩壊する原因にもなりかねません。とくに注意したいのが、相続人の一人が財産を勝手に処分してしまったケースで、よかれと思って行うこともあり、厄介な問題です。そこで今回は、相続人の一人が被相続人の財産を勝手に処分したケースの解決法について解説します。
遺産を勝手に処分するのはNG!
大前提として、遺産を勝手に処分する行為はアウトです。のちのち大きなトラブルに発展する恐れもあり、裁判沙汰になることも少なくありません。なかには、遺産整理業者に勝手に捨てられてしまうケースも見受けられますが、作業を依頼した相続人の責任とされることもあります。
遺産を勝手に処分してはいけない理由
遺産は故人が遺したものであり、相続の権利がある人が引き継ぐ権利を持っています。相続人が一人であれば大きな問題に発展しないかもしれませんが、複数人いる場合は処分に対し否定的な考えを持っている人がいるかもしれないのです。
とくに注意したいのが、その遺産に金銭的な価値および視聴的な価値があるケースです。それなりの価格で売れるような遺品を勝手に処分したとなると、ほかの相続人が損害を受けたのも同じことです。そもそも価値があると認められる遺産は、相続人全員で「遺産分割協議」する必要があり、そちらで分割の方法を決めなければなりません。
また、被相続人に借金などのマイナスの遺産がある場合に、勝手に遺産を処分すると相続放棄ができなくなる可能性があります。たとえば被相続人の500万円の借金があり、預貯金として200万円があったとします。その200万円を被相続人の返済にあてると、支払いの意思があると債権者側に理解されてしまい、相続人に対し督促が行なわれることもあるのです。
価値が認められる遺産とは?
捨てることはないと思いますが、現金や預貯金が挙げられます。また株式や債券といった有価証券も価値のある遺産で、土地や建物といった不動産、ほかにも自動車や貴金属が挙げられます。ブランド物なども価値があると判断されるので、勝手に処分するとのちのちトラブルに発展するので気をつけてください。
もし勝手に処分されてしまったときの対応策
遺産を勝手に処分された場合は、ここで紹介する方法で対処可能です。
民事で訴える
損害賠償請求および慰謝料請求で対応する方法があります。金銭的な価値のある遺産を処分されてしまった場合は、その金額分の損害賠償を請求できます。裁判にかかった費用もあわせて請求できるので、金銭的価値が高い遺産を勝手に処分された場合は、損害賠償請求で対処しましょう。
一方で、遺品に金銭的な価値がない場合は、慰謝料請求で対応するのがおすすめです。思い入れのある遺産を処分されてしまい、精神的な苦痛を受けたとして裁判を起こすのです。ただ慰謝料請求に関しては、金額をつけるのは難しいため簡単ではありません。弁護士と相談のうえ、慰謝料請求するか判断しましょう。
刑事で訴える
民事で対応できない場合は、刑事事件として訴える方法もあります。勝手に遺産を処分されたため、その遺産は壊されたとみなすことも可能です。つまり、器物損壊にあたるため刑事的な処罰も求められるのです。ちなみに、民事と刑事は並行して訴えることもできます。
分割前に勝手に処分された遺産を取り戻すことは可能?
遺産を相続人で分割する前に勝手に処分された場合は、状況によっては取り戻せるうえ、状況によっては取り戻せません。不動産については、登記の抹消を請求できるため取り戻せます。動産については、その動産を譲り受けた人が所有権を善意無過失に信じて譲渡を受けている場合は、所有権を取得することになるため返還は求められません。預金については引き出しの過失が重要で、過失がないと判断される場合は返還できません。一方で、とくに相談なく勝手な判断で引き出していた場合は過失があると判断され、相続分相当額の返還を請求できます。
相続発生した故人の財産にはノータッチで専門家に相談が一番!
親族が亡くなり、よかれと思って遺産を整理する方も多いです。しかし、価値がある遺産を処分するケースも多いため、相続が発生した場合は、まずは専門家である弁護士などに相談し、適切に判断してもらいましょう。勝手に整理および処分すると、大きなトラブルを誘引することになり、親族関係にヒビが入ることも考えられます。そもそも相続人が離れて暮らしていると、全員の意向をまとめるのも一苦労でしょう。間に専門家に入ってもらえれば、よりスムーズに相続手続きも進むのでおすすめです。
まとめ
遺産は故人が遺してくれたものであり、相続人に分割されるべきものです。しかし、相続人一人の判断で整理や処分すると、その価値に気づけないこともあります。一度処分されてしまえば、その遺品はもう戻ってきません。売却したものであっても、すでに新たな所有者がいる場合は取り戻すのも難しいです。のちのち後悔しないためにも、まずは相続に強い弁護士に相談することから始めてみてください。弁護士事務所の中には、相談無料で対応しているところもあります。複数の事務所に相談し、その中からもっとも信頼できそうなところに頼むのがおすすめです。