特別受益って何?自分の相続を減らさないためにできることとは

公開日:2022/12/15   最終更新日:2023/07/06


「相続は均等に分配されるもの」といったイメージを持っていませんか。そこで大きな問題にもなりかねないのが特別受益です。正しく理解していないと、相続額が少なくなる可能性もあるため事前に内容を把握し、反論材料を集めておかなければなりません。当記事では特別受益とは何たるものかを説明し主張されたときの反論方法も明らかにします。

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特別受益とは

相続人の一部が贈与により発生した利益を指しています。問題になるのは相続人が複数いるケースであり、一部だけが特別受益を受けているケースです。つまり特別受益を受けている相続人と受けていない相続人がいると、その特別受益が遺産に持ち直しされた「みなし相続財産」を元に具体的な相続分を算定されてしまい、相続額を減らすことになります。では、どのようなケースが特別受益に該当するのでしょうか。

学費

大学の入学金や授業料を贈与している場合は、特別受益とされる可能性があります。もちろん直ちに特別受益になるわけではありませんが、故人の社会的地位や資力およびほかの相続人との比較などから不要の範囲を超えているか判断されます。故人の資力が一定であり、相続人によって学費の大部分を提供していたか、それとも相続人に支払義務のある奨学金等を利用したかによっても特別受益の判断は分かれます。

仮に、相続人全員が同額程度の教育費を受け取っている場合は特別受益に該当しません(兄弟3人とも大学入学金を100万円ずつ提供されているようなケース)。ちなみに短期間で費消される少額の贈与は、親族間の扶養的金銭援助にすぎないことが多いため該当しないのが一般的です。海外留学への援助も対象とされる可能性があるので要注意です。

婚姻または養子縁組の費用

婚姻や養子縁組の際に贈与される支度金および持参金は特別受益に該当する可能性があります。ただ婚姻または養子縁組の費用であっても必ず特別受益にされるわけではなく、金額や故人の経済状況も考慮されます。一方で、挙式費用および結納金は一般的に特別受益には該当しません。

遺贈や死因贈与

遺贈は、金額に関係なく特別受益に認定されるため注意しましょう。死因贈与は死亡をきっかけとした贈与の契約であり、相続人が受け取るケースは特別受益です。

暦年贈与

年間110万円以下の贈与は相続税対策として広く認知されており、実際に活用されています。確かに非課税の扱いを受ける暦年贈与ですが、遺産分割では生前贈与と認められる可能性があります。つまり暦年贈与は、特別受益に該当する可能性があるので注意しなければなりません。もちろん相続人全員に同額を暦年贈与していた場合は該当しません。

特別受益の具体的例

株式などの有価証券や金銭債権などの贈与、車や土地建物といった不動産の贈与も特別受益とされます。また借金を代わりに払ってもらっていた場合や生活費を払ってもらっていた場合、事業資金を出してもらっていた場合も特別受益に該当します。ただ新築祝いや入学祝などであっても、親としての通常の援助の範囲内でなされた贈与は対象外とされます。旅行費用は該当する可能性があり「京都旅行で50万円の援助を受けた」「ヨーロッパ旅行で100万円の援助を受けた」といった場合は相続額が少なくなる可能性があります。

特別受益が主張された場合の対処法

ほかの相続人に特別受益を主張されたケースの対処法を4つ紹介します。

特別受益はないと主張する

ほかの相続人より特別受益を指摘された場合、指摘した側が証明する必要があります。つまり相手方は証拠を集めなければならないため、その証明は簡単ではありません。特別受益になるかは「遺贈、婚姻もしくは養子縁組のための贈与」または「生計の資本としての贈与」とされるかであり「相続財産の前渡し」に分類されるかにかかってきます。また生命保険金請求権の取得や婚資など(挙式費用、持参金など)も基本的には特別受益に該当しないとされているので、よくよく調べてみると指摘が間違っていることも多いのです。

贈与ではなく売買である

故人から財産を譲り受けていたとしても、それが贈与ではなく売買であるケースも珍しくありません。たとえば介護をする代わりに不動産を受け取るなどしていた場合も、売買とみなされる可能性があります。一方で支払った対価が実際の価格よりも著しく低いとみなされる場合は、特別受益としてその差額を計上される恐れもあります(2,000万円相当の土地を100万円で買ったようなケースが該当します)。

払戻免除

故人が持戻免除の意思表示をすれば、生前贈与などが特別受益に該当する場合でも相続分を算定する際に考慮されないようにできます。持戻免除の意思表示方法はとくに制限はありません。しかし相続対策を行う場合は、遺言および文書等に明記するのが一般的です。また払戻免除は民法の改正により新設された規定であり、対象の贈与は令和元年(2019年)の7月以降になるため、それ以降のものに限られます。

贈与ではなく扶養義務の一環

学費の贈与は特別受益に該当しますが、特別受益になるかならないかはケースバイケースです。生前の故人の資力とほかの相続人との比較で、極端な不公平が見られない限り特別受益は認められません。また特別受益を指摘する相続人が自ら高等教育(大学等)への進学を希望せず就職した場合も、特別受益とされません。

特別受益が認められても相続分が減らないケースとは

特別受益には時効はなく10年前でも50年前でも特別受益にあたる可能性があります。しかし2019年の法改正により、遺留分の算定において価額を算入できるのは特別受益にあたる贈与であっても相続開始前10年以内に限定されることになりました。

したがって、2019年以降に贈与されたものであれば、10年以上経てば特別受益が認められなくなったのです。仮に特別受益が認定されても、その計算方法に誤りがあることも珍しくありません。

そもそも特別受益があったときの金額で贈与は評価されます。現在の価格で評価されたものとは大きな違いがあることも珍しくないため、過去の価格で算出すると結果的に相続分が減らない可能性も出てきます。ほかにも弁護士等の専門家が間に入って調整すると相続分が減らないこともあるので、相談してみるのもおすすめです。

揉めてしまったときの相談先は?

前述したように弁護士に相談するのがおすすめです。とくに当人同士で話がまとまらない場合は、話は平行線のままになりやすく解決は簡単ではありません。相続問題を専門で扱う弁護士もいるため、そちらに相談し解決を図りましょう。

まとめ

この記事では特別受益について説明しました。特別受益とは故人から受けた贈与により発生した利益を指しており、金銭だけではなく不動産や有価証券等も含まれます。特別受益が認定されると結果的に受け取れる財産が減少する可能性があるため、事前に確認し、自身で解決が難しい場合は専門家(弁護士)のチカラも借りるのがおすすめです。


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