法定相続人以外に遺産を相続できる2つの方法を解説
親族同士のつながりが弱まる傾向にある昨今、親族以外の人に遺産を相続したいと考えるケースは珍しくありません。親族以外に遺産を残す場合は遺贈という方法が有効です。本記事では遺贈の種類や有効な遺言書の書き方、相続の際の注意点を紹介します。この記事を読んで、大切な人に財産を相続できるように知識をつけておきましょう。
遺贈には2つの種類がある
遺言による相続は、法定相続人以外に財産を譲る際に一般的に利用される手段です。
遺言には、特定遺贈と包括遺贈の2種類があります。
特定遺贈
特定遺贈は、特定の財産を明確に指定して譲る内容であり、預金は長男に、株券は長女に、自宅を内縁の妻になどがその例です。
特定遺贈では、財産が具体的に決まっているため、他の相続人との遺産分割協議は必要ありません。ただし、遺言書の作成時点から財産の価値に大きな変動があった場合には、公平性が損なわれる可能性があります。
そのため、財産の内容を変更する際には、遺言書の修正や再作成をしなければなりません。
包括遺贈
包括遺贈は、具体的な財産を指定せずに財産の割合を示す内容です。
全財産を与える、財産の3分の1を与えるなどがその例です。包括遺贈の場合、法定相続人以外が財産を受け取る場合、他の相続人との遺産分割協議が必要になります。
また、債務などのマイナスの財産も引き継ぐことがあり、財産の割合が指定されるため、自身の財産を正確に把握していない場合や、財産の内容に変化があった場合でも、一定の財産を譲れる利点があります。
しかしながら、包括遺贈では相続人間の遺産分割協議が難しい場合が多く、とくに相続人以外の第三者に財産を譲る場合は、円滑な話し合いが難しい場合があります。
そのため、遺言書を作成する際には、特定遺贈と包括遺贈の違いやそれぞれのメリット・デメリットを検討し、状況に応じて適切な遺贈方法を選択することが重要です。
法定相続人以外に相続させるために遺言書の書き方
遺言書を作成する際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。
これらのポイントを把握し、適切に遺言書を作成することで、法定相続人以外に相続させる遺産を確実に伝えられます。まず、遺言書は法的なルールに則って作成される必要があります。署名押印や作成年月日の明記などの要件を満たさないと、無効とされる可能性があります。
また、遺言書の内容は法定相続人の遺留分を侵害しないように注意が必要です。遺留分は法定相続人に保障された一定の財産の割合であり、遺言書の内容がこれを侵害する場合、遺留分の請求がなされる可能性があります。
そのため、遺言書の作成にあたっては以下のポイントに留意することが重要ですしておきましょう。
公正証書遺言を作成する
遺言書には自筆証書遺言書、公正証書遺言書、秘密証書遺言書の3種類があります。
公正証書遺言書は公証人が作成し、形式不備などで無効になるリスクが低いため、気兼ねなく利用できます。
遺留分を侵害しないようにする
遺言書の内容によっては遺留分が保障されます。
遺留分を侵害しない範囲で遺贈する財産を決定することが重要です。
遺言執行者を指定する
遺言執行者は相続手続きを代行し、遺言の内容を実現する役割を果たします。
遺言執行者の指定は任意ですが、相続手続きをスムーズに進めるために有効です。
付言で理由や思いを記す
遺言書には遺贈する理由や思いを付言として記すことが推奨されます。
これにより、相続人に納得が得られ、相続トラブルを未然に防げます。
遺贈する相手と相続人に伝える
遺言書の内容を遺贈する相手と相続人に伝えることが重要です。
生前に財産を遺贈する理由や思いを伝えることで、相続トラブルを回避できます。これらのポイントを踏まえて、適切な遺言書を作成することで、法定相続人以外に相続させる遺産を円滑に伝えられます。
法定相続人以外の相続だと税金が高くなる点に注意
法定相続人以外の人が相続する場合、相続税の申告納税が必要です。
相続税は、相続財産の総額が基礎控除を超える場合に課税されます。基礎控除は非課税枠であり、相続財産がその額を超えると課税されてしまいます。法定相続人以外の人に遺贈される場合、相続税の負担が大きくなる可能性があります。
また、不動産を遺贈する場合には、不動産取得税や登録免許税などの税金も必要です。贈与税は、生前に財産が受け渡される際にかかる税金であり、遺贈の場合にはかかりません。
相続税は、相続財産の総額に応じて課税されるため、法定相続人以外の人が遺贈される場合には、相続税の負担が増えてしまいます。とくに法定相続人以外の人が遺贈される場合は、相続税が2割加算される場合があります。
この場合、相続税の基礎控除を計算する際には、法定相続人以外の人は含まれませんが、取得した財産の割合に応じて相続税額が増加します。不動産を遺贈する場合には、不動産取得税や登録免許税などの税金もかかります。
不動産取得税は、不動産を取得した際にかかる税金であり、法定相続人以外の人が不動産を遺贈される場合にはこの税金がかかります。また、不動産を登記申請する際には、登録免許税もかかります。
登録免許税の税率は、法定相続人の場合と法定相続人以外の場合で異なり、法定相続人以外の場合には税率が高くなります。以上のように、法定相続人以外の人が相続する場合には、相続税だけでなく不動産取得税や登録免許税などの税金への考慮も必要です。
税金の負担増加に注意しながら、遺贈の際には適切な手続きをしておきましょう。
まとめ
法定相続人以外に財産を残す際、遺贈が有効な手段です。遺贈には特定遺贈と包括遺贈の2つの方法があり、それぞれメリットとデメリットがあります。特定遺贈は具体的な財産を指定し、他の相続人との協議が不要ですが、価値変動に注意が必要です。一方、包括遺贈は財産の割合を指定し、柔軟性がありますが、相続人間の協議が難しい場合があります。適切な選択と遺言書の作成により、大切な人に財産を相続させられますが、相続税や不動産関連の税金にも留意する必要があります。