借金などのマイナス財産が多い場合はどうすればいい?
相続と聞くと、家や土地などの財産を譲り受けるというイメージがありますが、実は借金などのマイナス財産も同時に受け継がれてしまうのです。今まで借金などの問題もなく生活していた人が、相続によって突然借金を抱えるということにもなり兼ねません。そこで今回は、こうしたマイナス財産の相続を回避するための具体的な方法を紹介します。
マイナス財産とは
相続する財産にはプラス財産とマイナス財産があります。プラス財産としては、土地や家屋、預貯金、有価証券、債権、知的財産権などが挙げられますが、マイナス財産とはどのようなものなのでしょうか。マイナス財産として存在する可能性があるものを具体的に紹介します。
借入金
借入金は多くの人に存在し得るマイナス財産で、住宅ローンや車のローンの残高債務、クレジット残債などが挙げられます。
未払金
未払金としては、土地や建物を借りていた場合の賃借料や水道光熱費、管理費、通信費、リース料などが存在する可能性があります。
敷金・保証金・預り金・買掛金
被相続人が第三者に土地や物件を貸していた場合などは、預かっている敷金や保証金、建築協力金などが存在します。また、事業を営んでいた場合は買掛金や前受金が存在する可能性もあります。
保証債務・連帯債務
責任限度や期間について定めのない信用保証や身元保証は原則として相続されませんが、通常の保証債務は相続の対象となります。被相続人が第三者の連帯保証人になっていたことが判明するケースもよくあるため、注意が必要です。
公租公課
被相続人に課されていた税金もマイナス財産として相続されます。たとえば、所得税、消費税、住民税、固定資産税、土地計画税、贈与税、国民健康保険料などが挙げられます。
マイナス財産を受け継いだらどうなる?
このようなマイナス財産が存在する場合、何も手続きをしなければ自動的に相続されてしまいます。マイナス財産の相続を防ぐためには、後ほど説明する「相続放棄」や「限定承認」といった方法がありますが、これらを有効にするためには、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申立てをしなければならないという期限があるのです。
この期限を過ぎると、自動的に財産すべてを承継する「単純承認」を選択したこととなり、マイナス財産も同時に相続することになってしまいます。「相続税を申告するほどの財産はないだろう」と思い込んで手続きをせずに期限を過ぎてしまうと「実は借金があった」という場合に手遅れで、知らないうちに借金を背負うことになってしまうのです。
マイナス財産を避ける方法はある?
マイナス財産の相続を避けるためには、相続放棄と限定承認という方法があります。それぞれどのような制度なのか詳しく見ていきましょう。
相続放棄
相続放棄は、プラス財産マイナス財産にかかわらずすべての相続財産を放棄する方法です。被相続人が借金を抱えていた場合などは相続放棄を選択するケースも多く、比較的耳慣れた制度だといえるでしょう。
すべての財産の相続を放棄するので「借金は放棄したいけれど、家や土地は相続したい」ということはできません。5,000万円の借金と500万円の不動産があるなど、明らかにマイナス財産が多いと判明している場合に適した制度だといえるでしょう。
限定承認
一方限定承認とは、プラス財産の範囲でマイナス財産を承継する方法です。たとえば、500万円のプラス財産と5,000万円の借金という場合でも、借金の負担は500万円までとなります。限定承認を申し立てておけば、後から借金の存在が判明した場合でも、プラスの範囲内でしかマイナス分を負担しなくて済むので、相続放棄よりも恩恵を受けられる場合があります。
相続放棄、限定承認ともに、家庭裁判所に申し立てを行う期限は、相続の開始を知った日から3か月とされていますが、この3か月の間に、被相続人の財産状況がすべて明らかになるとは限りません。家族も知らなかった借金が判明するケースも多く、確実にマイナス財産の相続を避けるためには、限定承認が適しているといえるでしょう。
相続には人によってさまざまなケースがありますが、状況に応じて最適な方法を使い分けることが大切です。あらゆる事態を想定し、時には予防線を張っておくことも相続においては重要なのです。
まとめ
相続には、よくも悪くも人生を変えてしまうほどの影響力があります。自分のケースではどのような手段を選択すればよいのかを臨機応変に見極める必要がありますが、専門知識のない一般の方にはなかなか難しいことではないでしょうか。最適な選択をして相続をスムーズに進めるためには、専門家である税理士事務所に相談することがおすすめです。
相続に特化した事務所や、生前対策のプランが充実した事務所など、相続の相談ができる税理士事務所は多数存在します。初回相談を無料で実施しているところも多いので、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。