相続人が行方不明の場合、捜索する必要はあるのか?対応策を検討しよう
相続が発生した際、法定相続人の中に行方不明者がいるという状況が起こり得ます。特に相続人全員の同意が必要な場面で問題となることが多いです。法律上の対応が求められるため、適切な手続きや対策を講じることが重要です。本記事では、相続人が行方不明の場合に捜索が必要なのか、そしてその対策について解説します。
相続において行方不明者の捜索が必要な理由
相続人が失踪している場合でも、その人が法定相続人である限り、相続権は維持されます。このため、行方不明の相続人が遺産分割協議に同意しない限り、他の相続人は遺産を自由に分割することができません。
まずは、行方不明の相続人を見つけ、協議に参加させる必要があります。捜索には、警察や市役所などの公的機関を利用することが一般的で、市役所では住民票の情報を基に行方不明者の居場所を確認できる場合があります。
また、家庭裁判所に依頼して、行方不明者の捜索を公告する手段を取ることも可能です。一定の期間内に行方不明者からの応答がない場合、次の段階に進むことができます。
行方不明者がいる場合の相続手続きの流れ
相続手続きでは、すべての相続人の協力が不可欠です。遺産分割協議においては、全相続人の同意が必要です。行方不明の相続人がいるとその同意が得られず、手続きが停滞してしまうことが避けられません。
行方不明の相続人がいても、その相続権は自動的に消滅するわけではないため、適切な対応が求められます。失踪中の人物を捜し出すことができれば、その後の相続手続きがスムーズに進められます。
しかし、見つからない場合には別の手続きを検討する必要があるので、その点については念頭に置いておきましょう。
不在者財産管理人の選任
行方不明の相続人がどうしても見つからない場合「不在者財産管理人」を家庭裁判所に申し立てることができます。この管理人は、行方不明者に代わって相続手続きを進める役割を果たし、失踪中の人物の財産を適切に管理します。
通常は、弁護士などの専門家が選任されることが多く、相続人全員の利益が守られるように務めるのです。管理人が選任されると、行方不明者に代わり、遺産分割協議などの重要な決定を進めることが可能となります。他の相続人も安心して手続きを進めることができるでしょう。
失踪宣告による相続手続きの進展
行方不明者が長期間にわたって見つからない場合、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告とは、法律上その人物が死亡したとみなされる手続きです。
こちらは、通常7年以上失踪している場合に認められます。ただし、災害や事故などで生存が極めて困難と判断される場合には、より短期間で失踪宣告が行われる可能性もゼロではありません。
この宣告が下されると、その人物は法律上死亡したものとされます。そして、相続手続きは通常の流れに沿って進められるのです。相続権は消滅し、次に優先される相続人が遺産を引き継ぐことになります。
失踪宣告前や後に行方不明者が発見された場合の対応
失踪宣告前に行方不明者が見つかった場合、その人物は相続手続きに参加する権利を持ちます。遺産分割協議がまだ進行中であれば、その人物の同意が必要です。
また、すでに不在者財産管理人によって手続きが進められていた場合でも、行方不明者が見つかればその時点で相続権が再開されます。一方、失踪宣告後に行方不明者が見つかった場合は、裁判所に申し立てを行い、失踪宣告の取り消しを求めることも可能です。
これが認められれば、その人物の相続権が再び有効となり、相続手続きが再開されます。
相続時に行方不明者がいる場合の事前対策
相続手続きで行方不明者が問題となることを避けるためには、事前にいくつかの対策を講じることが重要です。まず、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことが有効な手段となります。
遺言書があれば、相続人が行方不明になった場合でも、その内容に基づいて遺産分割が進められるため手続きが滞ることが避けられるでしょう。
また、信託を活用する方法もあります。信託を利用することで、相続財産をあらかじめ信託銀行などに預けておくことができます。
行方不明の相続人がいた場合でも、信託の受託者が財産を適切に管理し、遺産分割がスムーズに進められる仕組みが構築可能です。
まとめ
相続手続きにおいて、行方不明の相続人がいる場合、捜索が必要かつ重要な課題です。相続人全員の同意がなければ遺産分割協議は進まず、行方不明者が見つからないと手続きが停滞します。まずは公的機関を通じて、捜索を行いましょう。それでも発見できない場合は、不在者財産管理人を家庭裁判所に申し立て、行方不明者の財産を管理させる方法があります。さらに、長期間行方不明であれば失踪宣告を申し立て、その後の相続手続きを進めることが可能です。また、事前に遺言書を用意するなどの対策も重要です。こうすることで、問題発生時の迅速な対応を促進します。相続者が行方不明という事態はそうそう起こることではありませんが、もし発生すれば手続きが煩雑になる事態といえます。もし身内の方が行方不明である場合は、ぜひ本記事で紹介した内容を参考にしてみてください。