空き家を相続したら税金が倍増?知られざる「特定空き家」認定のリスク

相続した実家をそのまま放置していませんか?一見問題なさそうに見える空き家ですが、一定の条件を満たすと自治体から「特定空き家」に認定され、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がる可能性があります。本記事では、特定空き家の定義や認定基準、税金への影響、そして回避のために取るべき対策を詳しく解説します。
空き家が「特定空き家」に指定されるとどうなるのか
空き家を所有しているだけでは問題になりませんが、一定の基準を満たすと「特定空き家」に認定され、法律上の扱いが大きく変わります。まずはこの制度の仕組みと背景を理解しておきましょう。
特定空き家とはどんな状態を指すのか
特定空き家とは「空家等対策の推進に関する特別措置法」にもとづいて、市町村が危険性や衛生面の問題を認めた建物を指します。
具体的には、倒壊の恐れがある、害虫が発生している、景観を著しく損なっているなど、周辺住民の生活環境に悪影響をおよぼすと判断された空き家が該当します。
自治体の職員が現地調査を行い、写真や報告書をもとに正式に認定されます。
認定されるとどうなる?行政の勧告と命令の流れ
特定空き家に指定されると、まず所有者に対して改善を促す「指導」や「助言」が行われます。
それでも対応しない場合は「勧告」「命令」と段階が進み、最終的には行政が強制的に解体する「行政代執行」が実施されることもあります。
しかも、代執行にかかった費用は所有者に請求されるため、放置すればするほど金銭的リスクが高まります。
放置の末に失うもの―税制優遇の喪失
特定空き家に認定されると、これまで受けられていた住宅用地の固定資産税の軽減措置が適用されなくなります。
通常、住宅が建っている土地は固定資産税が最大6分の1まで軽減されますが、特定空き家になるとその特例が外れ、税額が6倍に跳ね上がるケースもあります。
つまり、放置したままでは税負担が倍増するどころか、維持すら困難になることもあります。
固定資産税が6倍に?空き家放置による経済的ダメージ
特定空き家に指定される最大のリスクは、税金の急増です。空き家をもつだけで税金が増えるわけではありませんが、特例が外れると経済的打撃は甚大です。
住宅用地特例が解除される仕組み
固定資産税は土地の利用状況によって課税額が変わります。住宅が建っている土地は「住宅用地」として評価され、税額が1/6(小規模住宅用地)または1/3(一般住宅用地)に軽減されます。
しかし、特定空き家に指定されるとこの特例が取り消され、通常の税率が適用されるのです。たとえば年額10万円だった税金が、いきなり60万円に上がることもあります。
解体しても課税リスクは残る理由
「それならいっそ取り壊せばいい」と考える人もいますが、建物を解体すると住宅用地特例の対象外になるため、土地の固定資産税は同様に高額化します。
つまり、老朽化して危険な空き家を撤去しても、受けられなくなる場合があります。放置すれば特定空き家、解体しても課税増加という、いわば「二重の罠」に陥るケースも少なくありません。
税負担を軽減するための選択肢
こうした事態を避けるには、空き家の活用や売却を早めに検討することが重要です。
賃貸に出す、リフォームして民泊や店舗に転用する、あるいは自治体の空き家バンクを活用して売却するなど、活用方法を明確にすれば特定空き家の認定を回避できます。
また、固定資産税の軽減制度や補助金を設けている自治体もあるため、早めに相談するのが賢明です。
特定空き家認定を避けるために取るべき3つの対策
特定空き家を回避するためには、法律の知識だけでなく、実際の管理・手続き・地域対応が欠かせません。認定を防ぐためのポイントを押さえておきましょう。
定期的なメンテナンスと現地確認を怠らない
まず最も基本的なのが、建物の定期的な点検と清掃です。外壁や屋根の破損、雑草の繁茂、ゴミの放置などが続くと「管理不十分」と見なされる恐れがあります。
遠方に住んでいて自分で管理できない場合は、地元の管理代行サービスや不動産会社に委託する方法も有効です。写真付きで報告してもらえるプランを利用すれば、認定リスクを大幅に下げられます。
自治体との連携で早期対応を図る
空き家に関する行政の調査や通知が届いたら、無視せず早めに相談することが大切です。勧告を受けてから改善しても手遅れになるケースがあり、行政は「対応の誠実さ」も判断材料としています。所有者が誠実に対応すれば、指導段階で済むことが多く、特定空き家への指定を避けられる可能性があります。
相続段階での共有名義トラブルを防ぐ
相続によって空き家を複数人で共有している場合、管理方針が決まらず放置されることが多いです。共有者のひとりでも反対すれば、売却や修繕が進まない場合もあります。
こうしたトラブルを防ぐには、相続登記を早めに行い、誰が管理責任をもつのか明確にしておくことが重要です。また、家族信託や遺言書を活用して将来的な管理方針を定めておくのも有効です。
まとめ
空き家の相続は、一見すると資産の継承に思えますが、放置すれば「特定空き家」という重い負担に変わる可能性があります。特定空き家に認定されると、固定資産税の軽減措置が解除され、税額が最大6倍に跳ね上がるほか、最終的には行政代執行の対象になることもあります。放置による金銭的損失や地域トラブルを防ぐためには、定期的な管理と早期の対応が欠かせません。空き家を「負の遺産」にしないためにも、相続した時点で活用・売却・管理の方針を明確にし、自治体や専門家と連携してリスクを最小限に抑えることが大切です。








